研究概要 |
アルミニウム合金の半溶融鍛造において、液相率は加工の成否を左右するばかりでなく製品の性状にも大きく影響するため、その高精度な制御方法の確立は半溶融鍛造品の品質安定に欠かせない。前年度に行った当初計画による抵抗加熱半溶融鍛造実験用加熱電源を用いた投入電力量と液相率の関係付けの実験では、大電流によるピンチ効果によって棒状試験片が溶融初期の段階で破断し、低い液相率での関連付けしかできなかった。本年度は、その結果を踏まえ、液相率制御に不可欠な基礎データとして溶融開始温度と完了温度、固液共存温度域での液相率の温度変化の情報を得るべく、示差熱分析に工夫を加え、半溶融鍛造用アルミニウム合金であるA357 (JIS規格のAC4Cにほぼ相当)を含め、A1070、A2017、A5056、A6061、A7075の典型的アルミニウム合金に対して示差熱分析を行った。その結果、工夫した示差熱分析で、液相率の温度変化を同時に測定できることがわかった。これにより、液相率の制御に不可欠な基礎データとしての溶融開始温度,溶融完了温度,液相率の温度変化の情報を1回の示差熱分析で簡便に得る方法が確立された。そして、固液共存温度域が広い場合には、加熱温度と投入電力量の関係付けによって、投入電力量の調整による液相率の高精度な制御が可能になった。しかし、固液共存温度域が狭い場合には、温度による液相率の制御は精度が低く、高精度な制御を実現するには、投入電力量と液相率の直接関係付けのための溶融潜熱の情報が必要である。示差熱分析でも溶融潜熱の測定は原理的に可能と考えられるが、現時点において、これを実現するには至っていない。なお、本年度の成果としての上記の知見は、「アルミニウム合金半溶融鍛造のための液相率と温度の関係の簡易測定」と題して、平成21年度塑性加工春季講演会(京都、5/29-31)にて発表する。
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