研究概要 |
まず超硬切削工具(インサート)の表面に多結晶ダイヤモンド回転工具により微細溝(深さ5μm,幅数十〜数百μm)を形成することを試みた.その工具を用いてアルミニウム合金(A5052)をフライス切削加工したところ,切りくずせん断角などの評価にもとづき工具表面の潤滑性を高められることが明らかになった.しかしダイヤモンド工具で微細溝を形成した際,その溝の肩部にチッピングが生じており切削特性に影響を及ぼす恐れがあり,またアルミニウム合金の切削において最も問題となる切りくずの凝着をなくすには至らなかった. こうした問題を解決するためにはマイクロ-ナノオーダの極微細溝が必要と考え,そこでフェムト秒レーザによる微細溝形成を試みた.その結果,切削工具表面に100nm以下の極微細溝を形成することに成功した.さらに,切りくず凝着をより抑制するために工具表面へのDLCコーティングを行った. このように新たに開発した工具により現有のマシニングセンタを用いてアルミニウム合金をフライス切削加工したところ,工具表面への切りくず凝着を劇的に抑制することができ,また切りくずせん断角の測定などから工具表面の潤滑性を高めることができた.このように微細溝を有していない通常の市販切削工具に対しその優位性を確認することができた.そして現在は極微細溝形状の最適化に関し研究を実施しており,すでにトライボロジー特性からいくつかの有意な結果を獲得しつつある.一方,切削工具メーカや加工メーカと情報交換を行うことで,本研究の方向性について明らかにすることができ,例えば穴加工,タップ加工などへの展開を次年度(最終年度)に検討することとした.
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