研究概要 |
消費者ニーズの多様化や複雑化,さらに製品ライフサイクルの短命化が進むにつれ,製造業を中心とするサプライチェーン全体において,納期の短縮化や変種変量生産への迅速な対応などが求められている.そこで我々は,現実の社会が有する効率性と安定性,頑健性などに着目し,システム内の構成要素のインタラクションとして,我々が日常社会で実践している社会的交渉を抽象化し適用することで,現実の社会と同様に大規模で動的に変容する生産環境下において,効率性と安定性を同時に実現できるような優れた性能を示す生産管理システムの新しい方法論について明らかにすることを目的として研究を進めた.具体的には,昨年度進めた社会的交渉モデルに関する理論的枠組みの整理・体系化をベースとして,今年度は,加工ワークを決定する方法として納期余裕と段取り時間を競り値としたディスパッチング型オークション方式を用いた社会的交渉プロトコルの運用系生産管理システムへの統合化,および生産管理プロトタイプシステムの検討を実施した.その結果,リアルタイムスケジューリングと並行して短期的な予測シミュレーションを実施することの有効性を確認し,さらに,現実の大規模機械加工ジョブショップラインを対象として,提案に基づき試作した生産管理システムの効果を明らかにできた.また,本システムの導入前と後でラインの性能を定量的に比較し,提案法の効果や有効性について検証・まとめを行った.
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