超精密切削用単結晶バイトの実現に不可欠な、ダイヤモンド単結晶基板でのホモエピタキシャル成長技術に関して、再現性を低下する要因である加工表面に残存する加工変質層を酸化性の酸素-アセチレン炎でエッチングし、引き続いてダイヤモンド合成できる条件を確立した。 結晶性を向上させた高純度・低欠陥ダイヤモンドにおいて、結晶性が高いほど破壊強度も向上し両者の間に強い相関が認められることを明らかにした。とくにカソードルミネッセンス分光分析において、波長235nm励起子発光ピークの認められるダイヤモンド膜において最も高い破壊強度が得られた。なお、評価した(100)成長面に対して、測定用のダイヤモンド圧子は最も破壊しにくい結晶方位を荷重方向としたにもかかわらず膜の破壊前に圧子が破壊する現象が認められ極めて良好な耐欠損性が得られたことが明らかとなった。 このほかダイヤモンド中に存在する点欠陥、転位の挙動に関して、ダイヤモンドの安定領域である、1000〜1500℃、2〜5万気圧の高温高圧条件下で数時間保持することで、ダイヤモンド中の欠陥構造が変化することをカソードルミネッセンス(CL)分光分析により確認した。具体的にはダイヤモンド中の欠陥の存在を示唆する波長430nmのBand Aピークの強度が低下し、ピーク位置が長波長側にシフトする現象が認められ、高温高圧処理により結晶欠陥が減少し結晶性が向上する傾向を示唆している。すなわち、合成した単結晶ダイヤモンドを高温高圧処理(例えば:1500℃、5万気圧)することで、ダイヤモンドの強度を向上できる可能性が考えられる。
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