研究概要 |
全置換型人工股関節における構成部品の中でポリエチレンライナは最も損傷が激しく、人工関節再置換のための大きな原因と目されている。同ライナは摺動使用される際に摩耗粉が生じ、これをマクロファージが貧食することにより破骨細胞を活性化させることが問題視されている。本年度は骨頭-ライナ間で生ずる負荷により同ライナ内部に生ずる応力解析より適切な内部構造の提案を行う。また,前者の摺動部から発生するU.H.M.W.P.E.の摩耗粉を抑制することを目的として,コーテッドU.H.M.W.P.E.の摩擦摩耗実験し,非晶質炭素の被膜が人工股関節ライナの摩耗粉抑制に対する効果を検討した結果,被膜厚さが500nmのDLC被膜を施したU.H.M.W.P.E.は摺動回数や摩耗量で長寿命延長効果が期待できることを明らかとした。また、一方では衝撃緩和の観点から発泡化したU.H.M.W.P.E.の衝撃実験により、発泡体が有する衝撃緩和機能について検討した結果、衝撃緩和機能は優れるものの塑性変形量が著しく生ずることから、新たなソリッド+粉末充填構造を提案し、この構造による衝撃力の低減を試みた結果、衝撃緩和特性と塑性変形特性の両面で優れることが明らかとした。
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