研究概要 |
アコースティックエミッション(AE)法をトライボロジー現象(摩擦、摩耗現象)の認識、評価に適用するため,繰返し摩擦試験および顕微鏡観察部に摩擦系を組み込んだin-situ観察実験により,トライボロジー現象とAE信号の関係を調べた。in-situ観察実験では,摩擦界面で起こる摩擦、摩耗の素過程をその側面よりリアルタイムで観察することができる。本年度の研究により,以下の点が明らかになった。 1)AE法は,摩擦係数の変化から検出できない摩耗粒子の脱落などのトライボロジー現象を把握することができる。 2)無潤滑繰返し摩擦下で計測されるAE信号は,摩擦界面に介在する摩耗粒子の生成およびその振舞いの影響を大きく受ける。 3)摩擦界面の損傷(両摩擦表面粗さRaの和)は,摩耗粒子(移着粒子)の生成過程における凝着や摩耗粒子の摩擦界面での振舞いの結果であり,AE信号の変動幅とよい相関を示す。 4)AE平均値やAE計数総数の計測から,摩耗粒子の数や大きさを評価できる可能性を示唆することができる。 5)摩擦に伴うすべり線(帯)の生成によって定常的にAEが発生する。 6)摩擦表面の塑性変形や摩耗(摩耗粒子の生成、移着)に起因したAE信号レベルの上昇や突発型AEが確認できる。本研究成果より,AE信号レベルやその変動の計測から,摩耗粒子形態やその数、大きさ,摩擦界面の損傷状態などを認識、評価できると考える。また,トライボロジー現象下で計測されるAE信号について,摩擦、摩耗の素過程との対応を新たに見出すことができた。
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