研究概要 |
平成20年度の研究では,トライボロジー現象とAE信号との微視的かつ定量的な関係を調べるため,μmオーダーの微小すべり摩擦下でAE信号波形の計測を行った.鏡面仕上げした純金属同士の凝着摩耗時と研磨紙を用いたアブレシブ摩耗時に得られるAE周波数の違いを調べた.凝着摩耗実験では,摩擦後の摩耗面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察し,生成した摩耗素子(摩耗粒子のもっとも素となる粒子)とAE信号の対応関係を調べた.本年度の研究成果を以下にまとめる. 1)凝着摩耗では,摩耗素子および移着粒子の生成時に,信号密度の高い高周波の突発型AE信号が検出される.そのAE信号の周波数分布は,材料に関係なく高周波領域(約1.1MHz付近)に周波数ピークが存在した. 2)AEパルス(突発型AE信号)は,摩耗素子の集団移着によって生じる.このAEパルスエネルギー(最大振幅値と継続時間の積)の大きさは,摩耗素子の生成量と比例関係にあり,摩擦させた材料同士の凝着力が関係している. 3)アブレブ摩耗では,信号密度の低い低周波の突発型AE信号が検出される.そのAE信号の周波数分布は,低周波領域(0.25~1MHz付近)に周波数ピークをもつ信号成分が存在した.このAE周波数のピークは,塑性変形,き裂の生成・進展,破断時に検出されるAE信号の特徴である. 本研究により,摩耗粒子の脱落のような巨視的な現象から,直径10~30nm程度の摩耗素子生成のような微視的な現象まで,トライボロジー現象の認識・評価に有効な対応関係を見出すことができた.
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