研究概要 |
これまでは,鉄道においてレールの運動疲労損傷のメカニズムが解明されていないため,レールの寿命,交換時期,点検間隔の決定が経験に頼らなければならず,安全面や経済面に課題が残っていた。X線回折法と最新の計測および解析手法を用いると,実レールの測定が可能で,この分野の発展に貢献できると考え検討を進めた。まず,現地用のX線残留応力測定装置について試作機を設計製作し,実際に営業路線のレールにおいて試運転を行い,有効性や課題を明らかにし,その改良に向けて貴重な知見を得た。ついで,レール試料の残留応力測定で課題となる試料切断による応力開放についてひずみゲージによる測定を行い,系統的なデータを得た。今後,これらのデータから切断前の応力状態をFEMによって逆解析する方法や,切断後のX線応力測定結果の解釈方法を検討する。使用レールの回折環データによる損傷状態の評価方法に関して,X線,シンクロトロン,中性子による測定を未使用および使用されたレールについて実測しデータを得た。回折環画像の解析は終了しており,そのデータのまとめを引き続いて行う予定である。エリアディテクタ方式の中性子応力測定の検討に関しては,シミュレーション,実測,測定理論の面から進め,中性子侵入深さにおける平均応力を三軸応力状態に対して評価できる見通しが得られた。以上より,試作,実測等の段階は概ね計画通り進み,今年度は引き続いてデータの整理と考察,装置や測定理論の改良を予定している。
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