研究概要 |
磁気ディスク装置大容量化のためのヘッド摩耗低減法として潤滑剤塗布面を摺動子で摩擦する「コンタクトバニッシュ(CB)処理」を提案している。実験で確認された摩耗低減効果の原理の解明により,さらなる摩耗低減指針を明らかにすることが本研究の目的である。 CB処理では潤滑剤塗布ディスク面の摩擦時のみに摩耗低減効果があったことから,nmオーダでの潤滑剤分布の解析を試みた。また,各種潤滑剤とその加熱,紫外線処理による摩擦摩耗特性の変化の実験を行い,潤滑剤とヘッド摩耗との関係について解析を進め以下の結果を得た。 (1)磁気ディスク表面のnmオーダでの潤滑剤分布の解析:撥水処理触針を用いた原子間力顕微鏡(AFM)による潤滑剤分子分布の可視化が有効と考え,学会誌報告の追試を開始した。しかし,既報の撥水処理剤が環境汚染の問題から販売停止であることが判明し,新たな処理剤の探索が必要となった。これまで入手した数種の処理剤では報告と同じ観察結果を数点確認できたが,継続的に得るまでには至らなかった。現在さらに別な処理剤について探索を継続している。 (2)ディスク表面エネルギーと摺動子摩耗の関係解析:潤滑剤のマクロな分布解析方法の一つである表面エネルギー(接触角)測定法により,CB処理ディスク面の解析を行った。その結果,同じ潤滑剤平均膜厚でも,CB処理により潤滑剤被覆率が変化することが明かとなった。摺動子の摩擦により潤滑剤分子がディスク表面に押し拡げられたことが,摩耗低減の要因ではないかと考えられる。 (3)潤滑剤の加熱、紫外線処理による摩擦摩耗特性変化の解析:潤滑剤の後処理により潤滑剤分子のディスク表面への付着状態を制御し,摺動子摩耗試験により解析を行い,潤滑剤固着膜厚演同じでも摩耗量が異なることを見いだした。この理由の解析結果は上の解析と結びつけることにより,磁気ヘッド摩耗低減指針の導出に有効と考えられる。
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