研究概要 |
磁気ディスク装置の高密度高信頼性化を目的とし,コンタクトバニッシュ(CB)法の解析を手始めに潤滑剤の摩耗低減効果について検討した. CB法は,固着率の低い従来潤滑剤では摩耗低減効果があったが,固着率の高い最近の潤滑剤では効果はあまり大きくなかった.CB法では,未結合の潤滑剤に物理的エネルギーを加え,表面に固着させることで摩耗低減の効果が生じていると推定した. そこで,固着率向上のためのこれまでの潤滑剤塗布面の熱処理,紫外線後処理に加え,塗布前の紫外線前処理についても解析した.解析では磁気ディスク表面エネルギー(分散成分,極性成分)と,ピン・オン・ディスク試験摩耗量変化の関係について考察した. その結果,紫外線前処理ディスクでは,前処理時間が増加すると固着率が増加し摩耗量は減少したが,紫外線後処理,熱処理ディスクでは処理条件により固着率は増加するが摩耗量も増加する場合があることを確認した.また,表面エネルギーの分散成分が小さい場合に,摩耗が少ないことをを明らかにした.潤滑剤の表面エネルギーが小さいことは潤滑剤の被覆率が大きいことを意味するので,摩耗低減のためには潤滑剤の被覆率が高いことが必要であり,固着率はその指標とはならないことを意味すると考えられる. 従来の潤滑剤塗布後の熱/紫外線処理で固着率の増加が被覆率の増加につながっていない理由は,これら処理による表面エネルギー測定結果では分散成分の変化は小さいが極性成分減少が大きいことから,潤滑剤はカーボン膜とは結合せず潤滑剤極性基同士で結合し固着量のみ増加しているためと推定した.今後,紫外線前処理により潤滑剤をディスク表面に直接固着させることが,被覆率向上,摩耗低減に効果が大きいと考えられる. この結果は,これまでの潤滑剤塗布後の熱/紫外線処理ではなく紫外線前処理の重要性を明らかにしており,今後の潤滑剤薄膜化の一つの鍵と考える.
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