研究概要 |
本研究では,浸炭焼入れ平・はすば歯車の浸炭焼入れによる残留応力計算を行うとともに,曲げ疲労試験を行って,残留応力と曲げ疲労強度に及ぼす硬化層深さ,浸炭部(歯面,歯車側面,リム内周,ウェブ表面),リム厚さ,歯車構造およびねじれ角の影響,残留応力と曲げ疲労強度の関係などについて検討を加えた.また,高周波焼入れ平歯車の焼入れ過程の電流密度,温度,応力の計算を行うことにより,残留応力と硬化層を求めるとともに,硬化層,硬さ測定,焼入れ組織観察,曲げ疲労試験を行い,表面硬さ,焼入れ組織,硬化層深さ,硬化層パターン,残留応力,曲げ疲労強度に及ぼす加熱時間,加熱電力,周波数,前処理の影響などについて検討を加えた.その結果,次のようなことが明らかになった.(1)浸炭焼入れによる平歯車のHoferの危険断面の圧縮残留応力σ^*θ=30°(絶対値)は,側面浸炭焼入れによって減少し,その程度は硬化層厚さの増加,歯幅の減少につれて増大する.(2)浸炭焼入れ平歯車の曲げ疲労限度は,側面浸炭焼入れによって硬化層が厚すぎる場合には減少し,適切な硬化層深さの場合には,浸炭部にかかわらず変化しない.(3)浸炭焼入れ薄肉ウェブ構造平歯車(リム厚さl_w=2m)の曲げ疲労限度荷重P_<nu>は,対称ウェブ構造歯車の場合には,一体歯車の場合とほぼ同じになるが,非対称ウェブ構造歯車の場合には一体歯車の0.85倍程度になる(重量は約半分になる).(4)高周波焼入れ歯車の加熱電力Pが小さい場合には,加熱時間t_hがかなり大きくなるため,Pが大きい場合に比べて歯形に沿った硬化層が得難い.(5)高周波焼入れS35C,S45C調質鋼および圧延鋼歯車の曲げ疲労強度に対する最適硬化層パターンを示した.
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