研究概要 |
本研究では,浸炭焼入れ平・はすば歯車の硬化層の硬さ測定,組織観察,曲げ疲労試験および衝撃試験を行って,曲げ疲労強度および衝撃強度に及ぼす硬化層深さ,浸炭部,ねじれ角,歯幅および焼戻し温度などの影響について検討を加えた.また,高周波焼入れ歯車の硬化層パターンおよび組織観察,硬さ測定および曲げ疲労試験および衝撃試験を行い,硬化層パターン,硬化層深さ,曲げ疲労強度および衝撃強度に及ぼす加熱条件(加熱電力,周波数,加熱時間),材料,前処理および焼戻し温度などの影響について検討を加えた.その結果,次のようなことが明らかになった.(1)浸炭焼入れはすば歯車の曲げ疲労限度に対しても,平歯車の場合と同様に最適硬化層深さが存在する.(2)本研究で用いたような浸炭焼入れはすば歯車の曲げ疲労限度円周力F_tuは,ねじれ角β_oの増加とともに増大する,(3)浸炭焼入れはすば歯車のF_tuは,β_o=10,20°,有効硬化層深さd_e=0.67mmでは,側面浸炭焼入れした場合(Case TS)のほうが側面浸炭防止した場合(Case T)より大きくなるが,β_o=200,d_e=1.12mmでは,逆にCase Tの場合のほうが大きくなる.(4)浸炭焼入れ焼戻し歯車の衝撃破断エネルギーE_bは,有効硬化層深さd_eにかかわらずT_t=180℃付近で極大値をとる.(5)本研究で得られたS45C調質鋼高周波焼入れ歯車の最大曲げ疲労限度は,浸炭焼入れ歯車の場合に匹敵する大きさである.(6)本研究で用いたようなS35C,S45C調質鋼高周波焼入れ歯車の焼入れ組織は,全歯幅にわたってマルテンサイトであるが,S35C,S45C圧延鋼の場合には,フェライトが残り,とくに歯幅中央部に多く残る.(7)S35C,S45C調質鋼および圧延鋼を用いた高周波焼入れ歯車の曲げ疲労強度に対する適切な焼入れ条件を歯元の表面硬さおよび有効硬化層深さから推定するためのマップを提示した.
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