研究概要 |
昨年度は光量不足と照明ムラのため高速度カメラが有効に利用できなかったので,今年度はメタルハライド光源を8本の光ファイバを利用して多方向から照明する方式に変更した.その結果,光量不足の問題は解決したが,照明ムラについては限られた光ファイバの分割数でに未だ満足すべき状態ではなく,さらなる改善が必要である.一方,股関節の多方向滑り状態を評価するゴニオメータの試作は成功し,股関節の骨頭と臼蓋軟骨間との相対滑り状態を描けるようになった.7人の被験者について測定した結果,個人的歩行パターンの特徴が,滑り線軌跡に明瞭に反映されることが分かった.臨床では一般的な矢状面や正中面からの骨軸の角度である,屈曲・伸展角あるには内外転角・の時間的変化で歩行状態を評価するため,別々のグラフを見なければならず,相互の関連が読み取り難い.一方,滑り線軌跡ではそれらの動きを合成した骨頭の三次元的動きを直観的に読み取ることができるため,歩行パターンの特徴が明瞭に識別できることが分かった.臨床的関節角度は測定するには容易で便利であるが,それらより骨頭の多方向滑りを評価することは難しい.本研究で開発したゴニオメータは,従来のゴニオメータのように,ゴニオメータの回転中心と股関節の回転中心を一致させる必要もなく構造が簡単なため,複数の高速度カメラでマーカーの動きを画像解析する方式と比較してはるかに安い.そのため臨床現場での歩行障害者の定量的評価やリハビリの評価にも利用できることが期待される.
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