研究概要 |
平らな面を持つ物体どうしを接触させると,巨視的には面接触であるように見えるが,微視的には接触している部分と,離れている部分とが存在する.2面の接触している部分付近に液架橋を構成させると,液架橋は2面をお互いに引き寄せる力を発生させ,物体間の相対運動に影響を及ぼす.ここで,平らなステージに微小物体を乗せ,ステージを振動させることによって微小物体を運動させる機構を対象とすると,運動物体が小さくなるほど液架橋の影響を大きく受ける.本研究は,この液架橋の影響を有効に利用して運動制御する技術の確立を目的としている. 本年度は,微小振動による運動下において液架橋の真実接触面積とすべり摩擦との関係を定量化するとともに,振動駆動において液架橋を利用した運動制御が可能になる条件を導き出した.まず,初年度の研究において,微小な球面と直角プリズムとの接触状態をプリズム全反射光によって視覚的に捉える観察手法が開発されているので,この計測手法を利用して液架橋を含む接触面の真実接触面積を映像によって計測した.これと同時に,座面を振動させることにより直角プリズムを移動させる実験を行い,液架橋を含む接触面積とすべり摩擦との関係を測定した.この結果,直角プリズムの運動に伴って液架橋が接触面をずれて動く場合は,液架橋は運動にほとんど影響を及ぼさないのに対し,液架橋が切れて動く場合には,強い影響を及ぼすことが明らかになった.しかも,その影響は液架橋を含む接触面積が大きいほど強いことが分かった.この結果から,液架橋が特定の方向にずれながら運動するよう接触面の形状を工夫することで運動制御が可能であることが明らかになり,液架橋を利用した運動制御の方法として整理した.
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