研究概要 |
ダイヤモンドに代表される炭素系共有結合材料は優れた機械的・電気的特性を有することから、応用を指向した際に可能性を秘めた新材料として注目されている。本研究は表面機械的特性に優れた、特にトライボロジカルな特性発現に注目して、炭素系機能材料を用いた高機能表面を、三次元イオン注入・堆積プロセスを主体とする手法を用いて、形成する技術開発を行うことを目的とする。より具体的には、三次元イオン注入・堆積プロセスならびにイオンプレーティングなどの気相合成プロセスを用い、高い摩擦耐久性を有する、(1)B-C-N系薄膜ならびに(2)ナノコンポジットDLC膜の開発を行い、膜の摩擦係数が0.1以下の低摩擦特性と比摩耗量が10^<-7> mm^3/Nm以下となるような良好な耐摩耗性を発現できる膜の設計指針を得ることを最終目的として開発を行った。(1)B-C-N系ヘテロダイヤモンド膜の開発に関しては、立方晶窒化ホウ素(c-BN)膜の持つ付着性などの問題を解決するために、BN膜中にCを含有させるB-C-N系3元系膜の合成に関する研究を,報告者らが開発した磁界励起形IPを用いて実施した.その結果,膜中に含有する炭素量を適当に制御できること,そして合成されたB-C-N系膜は良好なトライボロジー特牲を示すことを明らかにした.(2)ナノコンポジットDLC膜の開発に関しては,摩擦耐久性に優れるナノコンポジットDLC膜の開発,特に真空環境中での特性発現を目指したスペーストライボロジー分野への展開を図るべく,C-H系ならびにC-F系分散構造ナノコンポジット膜の開発を実施した,これには所有する三次元イオン注入・堆積プロセスであるPBII(Plasma BasedIon Implantation)装置を使用した.今後は,同装置を活用し,C-H, C-F系に加えより広い応用展開が期待されるC/硫化物系DLC膜の積層構造ナノコンポジット膜ならびにC/Si系DLC膜の膜-基板界面の組成傾斜化による膜付着力の改善と分散構造ナノコンポジット膜の開発を中心に実験を進めることを計画している.
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