研究概要 |
ダイヤモンドに代表される炭素系共有結合材料は優れた機械的・電気的特性を有することから,応用を指向した際に可能性を秘めた新材料として注目されている.本研究は表面機械的特性に優れた,特にトライボロジカルな特性発現に注目して,炭素系機能材料を用いた高機能表面を,三次元イオン注入・堆積プロセスを主体とする手法を用いて,形成する技術開発を行うことを目的とする.より具体的には,三次元イオン注入・堆積プロセスならびにイオンプレーティングなどの気相合成プロセスを用い,高い摩擦耐久性を有する,lB-C-N系薄膜ならびに2ナノコンポジットDLC膜の開発を行い,膜の摩擦係数が0.1以下の低摩擦特性と比摩耗量が10^<-7>mm^3/Nm以下となるような良好な耐摩耗性を発現できる膜の設計指針を得ることを最終目的として開発を行った.1B-C-N系ヘテロダイヤモンド膜の開発に関しては,BN膜のCを含有させた3元系膜の合成を行ったが,硬度が20GPaを超える高硬度膜の合成には至っていない.2ナノコンポジットDLC膜の開発に関しては,摩擦耐久性に優れるナノコンポジットDLC膜の開発,特に真空環境中での特性発現を目指したスペーストライボロジー分野への展開を図るべく,原料ガスにアセチレンとSF_6の混合ガスを用いる方法によりC-S-F-H系ナノコンポジット膜の開発を実施した.この膜は,形成条件にも依存するが,目的とする真空環境下での摩擦係数が,大気中でのその値の50%程度となる0.03という非常に低い値を示すことを明らかにした.そして,ESRを用いた構造評価も実施している.今後は,このC-S-F-H系膜の現時点での課題である耐久性向上のための検討を進めていきたい.さらに,同装置を活用し,より広い応用展開が期待されるC-Si-O系ナノコンポジット膜,ならびにC/Si系膜の膜-基板界面の傾斜組成化による膜付着力の改善に関する,より実用的な開発検討も進めることを計画している.
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