研究概要 |
転がり軸受に電流が流れると電食が発生し,損傷してしまう.したがって,転がり軸受内部に電流を流すことは,複写機の転写ローラ用軸受等導電性グリースを封入した一部の軸受を除いては厳禁とされてきた.しかし,最近ではインバータからの高周波ノイズ等が原因で電食が発生する例も見られるようになってきた.意図せず軸受内を電流が流れる事態が起こる可能性が高くなっており,直流・交流における小型玉軸受の厳密な電食発生条件の確立が求められている. 転がり軸受の電食については,鉄道車両電動機用軸受を中心に研究が進められており,電食発生の目安も明らかにされているが,近年その目安よりも小さな電流密度で電食が見られるようになってきた.昨年度の研究では,小径玉軸受608を用いて電流密度を細かく設定した直流電圧印加における回転試験を行ない,電食発生限界電流密度は0.04A/mm^2程度であり,従来電食発生目安とされていた電流密度(1A/mm^2)よりも2桁小さな値であることが明らかとなった.今年度の研究では,軸受の型番を増やして,昨年度の電食発生目安が小径玉軸受に共通した値であるかの確認を行った. 6201(内径12mm),6203(内径17mm)を用いて608と同様の実験を行った結果,両型番とも電食が発生する電流密度は0.04A/mm^2付近であることが確認され,この電流密度が小径玉軸受の電食発生条件として共通していることが明らかとなった.従来の電食発生密度1.0A/mm^2は小径玉軸受に適用できないことを明らかにしたとともに,新たな電食発生電流密度を実験的に明らかにすることができた.
|