研究概要 |
本研究では、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、種々の材料および環境下におけるマイクロ/ナノトライボロジーおよび微細加工と、それに伴う微構造変化について調べた。微構造変化を調べる手法としては、微小な摩耗部・加工部を集束イオンビーム装置(FIB)で薄片化し、その断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察する独自の方法をとった。得られた結果を以下に示す。 (1)AFMの探針とシリコンウエハ表面間に電圧印加した状態で探針を走査することにより、線状にナノスケールの凸加工をすることができた.FIB装置を用いて加工部の薄片化を行い、透過型電子顕微鏡で断面形状と組織を調べた結果,アモルファス構造であることが明らかになった。 (2)人工骨材料として実用されている水酸アパタイトを試料として、AFMを用いて微小荷重で引掻き摩擦を行うことで、マイクロ/ナノトライボロジーと微細加工の可能性について調べた。その結果、荷重の増加に伴って摩耗量は増加し、引掻き回数が増加すると摩耗粉が発生した。摩耗に伴う微構造変化をTEM観察した結果、水酸アパタイト結晶中に歪みや転位が発生するとともに、微細な結晶が現れてくる様子が観察された。この結果より、AFMを用いて水酸アパタイトの微細加工が可能であると思われる。 (3)走査プローブ顕微鏡(SPM)よる微細の加工メカニズムを解明するために、TEM内で、薄片化したシリコンウエハ試料とSPM探針の間に応力や電圧を付加して、それに伴う試料の構造変化をその場観察できる装置を開発できた。これを用いて探針を試料に接触させて微小荷重を負荷した結果、試料中に弾性歪みや転位が発生する様子を観察することができた。
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