研究概要 |
摩擦により生じた材料表面膜は、塑性ひずみの導入や材料移着によるナノ結晶化、相手材との合金化により微細構造を持ち、高硬度で耐摩耗性、耐凝着性に優れた高機能な膜であると考えられる。2年目の平成20年度では、摩擦を利用した材料表面膜の物性に加えて、その表面膜のトライボロジー特性の評価に重点を置いた。 その成果として、(1)ピンオンディスク摩擦試験を行ったS45C、純Fe、純Cuの全ての材質において、ナノ結晶化(S45Cで30-50nm、純Cuで100-150nm)した移着層や微細組織層が塑性流動組織の上に厚さ10〜50μm生成し、移着層と摩擦表面層の微細組織には大きな違いはない。(2)微細組織層・移着層は、全ての摩擦条件で硬さが母材より大幅に上昇したが、その硬度上昇度合いはホールペッチの法則より小さい。(3)摩擦表面膜厚さは,大気中よりも真空中で生成した方が厚く硬い。また、真空中で生成した微細表面膜は、耐摩耗性に優れるが、相手材アタック性もある。(4)純Fe、純Cuにおいても生成した微細組織の硬さが母材より上昇したことから,この微細組織(ナノ結晶)は,熱的要因よりも高ひずみ(SPD:Severe Plastic Deformation)により引き起こされたと考えられる。(5)純Cuピン、純Alピンと摩擦させてディスク表面に生成した移着膜は、ある摩擦距離までマイルド摩耗が続き、特に真空中で生成した移着膜のマイルド摩耗摩擦距離は長い。さらに、純Cuピンを摩擦させた後、純Agピンを摩擦させて生成した複合移着膜は、摩耗を大幅に低減する。(6)真空中でBiの微粒子を摩擦面に供給して生成した表面膜は、優れた摩擦摩耗特性を示す。
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