研究課題/領域番号 |
19560154
|
研究機関 | 独立行政法人国立高等専門学校機構宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
後藤 実 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (00435455)
|
研究分担者 |
秋本 晃一 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (40262852)
|
キーワード | ナノ材料 / トライボロジー / 超薄膜 / 表面・界面物性 / 放射線X線粒子線 |
研究概要 |
昨年度までは、Si(111)清浄表面に1原子層の銀原子が化学吸着したSi(111)√<3>×√<3-Ag>表面(以下、√<3-Ag>表面)に成膜した銀多結晶膜の、摩擦配向度と摩擦係数減少率の関係を調査し、摩擦配向度は、10nm以下の平均膜厚において顕著に生じ、膜厚が20nmよりも厚くなると生じなくなること、摩擦面の接触圧力の増加に伴い増加すること、摩擦配向面上に成長する銀薄膜はエピタキシャル成長することなどを、超高真空中における摩擦試験果と放射光によるX線回折の解析結果より明らかにしてきた。前年度までの成果を踏まえ、10nm以下の膜厚の摩擦配向領域と未しゅう動領域との配向性の差をさらに増加させるためには、膜の初期配向性をさらに低下させることが必要であると考察された。本年度は、銀薄膜の配向性が成長基板表面組成に大きく依存することを踏まえ、成長基板を厚さ20nmの熱酸化層を有するSi(100)基板に替え、初期配向性と摩擦特性を明らかにし、摩擦配向度の変化を調査した。その結果、√<3-Ag>表面上に成長する銀多結晶膜は(111)配向が強い膜であるが、Si(100)熱酸化基板上に成長する銀多結晶膜の初期配向性は、√<3-Ag>表面上の膜よりも111配向が低下することを、放射光によるX線回折によって明らかにした。また、X線回折強度の解析から、Si(100)熱酸化基板上における成膜速度は、√<3-Ag>表面上よりも低下することが示唆された。Si(100)熱酸化基板上に膜厚10nm相当の銀多結晶膜を成膜し、超高真空中において摩擦試験を行なった結果、摩擦配向現象は認められたものの、摩擦による膜の剥離が生じるために、正確な摩擦配向度を求めることが不可能であることが明らかになった。この原因は、銀多結晶膜を直接Si熱酸化表面に成膜すると十分な密着性が得られないためであり、膜の密着性向上が新たな課題として残った。
|