研究概要 |
本研究では,走化性バクテリアにより形成される生物対流に関して,微生物の挙動や酸素の輸送特性を調査することを目的とし,今年度は二種類の解析から以下の知見が得られた. 1.生物対流の容器深さによる影響:本研究では,深い容器中の走化性バクテリアにより生じる生物対流の数値解析を行った.レーリー数の増加とともに非線形性の影響が現れ,臨界レーリー数では水面近傍に集まったバクテリア集団が沈降し,生物対流が発生した.レーリー数の増加とともに酸素とバクテリアの対流による輸送が大きくなった.深い容器では底面付近まで酸素が十分に供給されないため,底面近傍ではバクテリアは不活発となり,容器深さにより輸送特性が異なる.臨界レーリー数に達するまでバクテリアの酸素消費度は一定であるが,レーリー数の増加とともに容器中のバクテリアの酸素消費度は低下した. 2.三次元生物対流の発生予測:本研究では,走化性バクテリアにより生じる生物対流に関する三次元数値解析を行った.レーリー数が臨界値に達すると水面近傍のバクテリア集団は三次元的なプルームを形成し,生物対流を発生させた.周囲の流体はプルームの影響で下方向へ引き込まれ,渦輪が形成された.さらにレーリー数を増加させると,プルームは底面に向って伸長し,生物対流は大きくなる.プルームの伸長が水面近傍のバクテリア量を減少させ,底面近傍では増加させた.プルームの形成までの遅れ時間は,レーリー数の増加によって早くなり,実験値と定性的に一致した.レーリー数が増加すると,酸素の拡散やバクテリアの遊泳による輸送と比較して,対流輸送が支配的となった.
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