本年度は電磁流体乱流のダイナモ効果の研究として以下の2項目について研究を実施した。 1.ポンプ効果の理論的考察 電磁流体のレイノルズ平均モデルとして不可欠な乱流起電力のモデリングを統計理論を用いて行った。既存の2スケール相互作用近似の理論に回転系の扱いや応答関数について改良を加え、より高次まで計算を行った結果、アルファダイナモ項や乱流磁気拡散項の他に、ダイナモ現象の一つであるポンプ効果の項を導出し、その物理的意味を考察した。ポンプ速度が電磁流体残留エネルギーの空間勾配と密接な関連があること、また乱流磁気拡散率が主に運動エネルギーに依存することなどがわかった。回転球殻のモデル計算にポンプ項を適用し、ポンプ効果が平均磁場分布に与える影響を調べた。アルファダイナモ項とは逆の効果を与えることがわかった。 2.電磁流体乱流の計算プログラムの作成と予備計算 電磁流体乱流のLESモデルとして既存のモデルを元にスマゴリンスキー型のモデルを導いた。また、有限差分法を用いて直方体のチャネル乱流の計算プログラムを作成した。特に壁面の磁場の境界条件として絶縁体の条件を導入した。比較的粗い計算格子を用いて、小規模なLES計算を行い、平均磁場や乱流エネルギーの時間発展を求め、ダイナモ効果による磁場の発達と、磁場の抵抗による運動エネルギーの減衰などを調べた。平均磁場の主流方向成分が現れることがわかり、その時間発展を支配する平均電場の収支を調べることによりダイナモ効果として平均渦度に比例するクロスヘリシティー・ダイナモが示唆された。
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