研究概要 |
脳動脈から大動脈までを想定した側部における瘤モデルと,中大脳動脈と脳底動脈を想定した分岐部における瘤モデルについて,PIVを用いた体外実験及び数値計算を行ってデータを蓄積し,瘤破裂の危険と血管内治療による治癒の可能性を論じた.壁面せん断応力が血管壁を細胞変質させ損傷を引き起こすという観点から,以下の結論を得た. 1)アスペクト比(瘤頚部直径と瘤深さの比)2.2の側部瘤に関して,拍動を課したときの一周期の流れ現象とそのメカニズムを明らかにし,末梢側頚部で壁面せん断応力が最大となること,拍動加速時に瘤低壁の圧力が親管内圧力よりも高くなることを示した.つまり末梢側頚部において壁面細胞の変質が生じやすくなり,拍動加速時に瘤破裂の可能性がある.また,ステントにより瘤内の速度,瘤への流入量,瘤壁面せん断応力/圧力を抑制できることを示した.ステントの閉塞率一定のもとで素線分布を変えて,さらに効率よく瘤内流れを抑制するためには,末梢側頚部を塞ぐようにステント素線を配置すればよいことを示した. 2)分岐動脈モデルに関して,瘤の無い場合に瘤の発生する起点となる場所は,親管中央からの流入が衝突する点(よどみ点)から少し離れた位置である確率が高く,その結果よどみ点近傍においても瘤が成長する可能性が生じる.後者の例として血管分岐部の左右対称な位置にアスペクト比2.2となる動脈瘤が形成された場合,分岐部近傍における第二の瘤の発生確率は低くなり,瘤内から分岐管中心軸を通る平面上の壁面中域において瘤の破裂または成長の可能性が高まることが示された.
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