研究概要 |
人体には比較的太い血管からなる巨視的循環系から毛細血管などで構成される微小循環系を経由して再び巨視的循環系へとめぐる血液の流れがある.血流は酸素や栄養分を末梢組織までくまなく行き渡らせると同時に体内における熱輸送を行っている.この血流による体内の熱輸送は人体にとって非常に本質的なものであることから,広い応用分野や関連分野が存在する.本研究では,この人体内部の流動および伝熱現象を詳細に把握するための新しい計算手法を提案し,巨視的循環系と微小循環系の両方を同時に取り扱い,血液の流れと体内組織の熱現象とを同時に考慮した解析手法の構築を目指すとともに,汎用的なPC環境上での並列計算により,現実的な時間内での解析を実施可能とすることを目的とする. ここで,基本となる考え方は次のようなものである.マクロな視点から微小循環系を見れば「血液(流体)でもあり細胞組織(固体)でもある」という流体と固体の中間的な存在と考えることができる.そして個々の毛細血管の流れや熱輸送そのものは不明であっても,ある一定の領域において血液や熱の収支は合っているという点に着目し,有限体積法とVOF (Volume of Fluid)法とを組み合わせて利用する.平成20年度は前年度に引き続き,微小循環系領域における流れと熱輸送を取り扱うための上記計算モデルの構築および検証を進めた.直交格子に対して再帰的な分割を取り入れることで,より自由度の高いモデル構築が可能になることがわかった.さらに,PCをネットワーク接続することで構成した小規模なPCクラスタを用いて並列化プログラムの開発およびその検証を行い妥当な速度向上が得られることも確認した.
|