研究概要 |
本研究では,温度制御と微細パターン電極による電場制御により,スメクティック液晶を場所により異なる状態変化を発生させ,液晶の部分的な固相化によるマイクロ構造を形成することを目的とした. 本年度は櫛歯状電極を用い,一部に交流電場を,一部に直流電場を印加して,構造の異なる液晶相を発現させ,重力または遠心力により,降伏現象をほとんど呈さない交流印加部を流し,直流印加部の構造のみを残す実験を行った.その結果では,流れやすさの違いが現れる場合と現れない場合など再現性が十分でない結果が得られた.この原因を解明にするために,直流および交流のそれぞれの電場下で形成される構造を偏光顕微鏡下で,形成過程を含めて検討を加えた.まず,交流電場下では静的に構造が形成され,安定したスメクティック相が発現していることが確認された.一方,直流電場下ではネマティック相の状態で電気対流が発生しており,その状態で温度が降下するため,層構造を有するスメクティック相は発現せず,言わばネマティック相に近い状態で,グリース状に硬化していることが明らかになった.すなわち,当初の目的のためには,直流印加部で対流などによりスメクティック相と異なる構造を形成できる微細な電場印加方法を検討する必要があることが分かった. また,直流電場下で形成された層構造を有しない構造は弾性的な特性を有し,微小ひずみの範囲内では応力を除荷した場合に一部ひずみ回復が生じることも明らかになった.現在,このような構造を効果的に発現させるために,急冷による構造形成の可能性などについても,検討を続けている.冷却時の構造形成を十分に制御できるようになれば,当初の目的も達せられると考えられる.
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