陽イオン性界面活性剤水溶液の抵抗低減流れに関してはこれまでに数多くの研究が行われているが、環境負荷の小さい非イオン性界面活性剤水溶液の抵抗低減(DR)効果に関する研究は少なく、特に境界層流れについての研究は見当たらない。本研究では、非イオン性界面活性剤水溶液として主に、オレイルジメチルアミンオキシド(ODMAO)およびアルキルポリグリコシド(APG)を使用した。 1. ODMAO 500ppm水溶液の境界層流れにおいて、平均速度分布及び乱れ統計量は、しばしば陽イオン性界面活性剤水溶液の抵抗低減流れで見られるものと同様の挙動を示すことが明らかになった。ただし、陽イオン性界面活性剤水溶液で見られるような、レイノルズせん断応力がほぼゼロとなるような結果は得られなかった。また、水の場合にはスケールの異なる渦が混在しているのに対して、ODMAO 500ppm水溶液の場合には渦が少なく、そのスケールも大きくなることが明らかになった。 2. APG 6000ppm水溶液の境界層流れにおいて、最大DR=15%程度であり、顕著なDR効果は見られなかった。円管内流れにおいては、最大DR=65%が得られているが、このDRの相違の原因としては、境界層流れにおける壁面せん断応力が、DR効果が得られる壁面せん断応力の範囲よりもかなり小さいことが考えられる。 3. 主流に平行で壁面に垂直な面内(x-y面内)に加えて、壁面に平行な面内(x-z面内)における瞬時の速度変動ベクトルのPIV計測を行い、水に比べてストリークのスパン方向の平均間隔が広くなることを明らかにした。 4. テトラデシルジメチルアミンオキシド(TDMAO)と3-および4-ヒドロキシ安息香酸を水に添加した非イオン性界面活性剤水溶液は、高いDR効果に加えて、劣化の影響をほとんど受けないことを明らかにした。
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