研究概要 |
当該研究は,生物機能と形態構造との関連性による生命現象の発現に関して,植物の生命現象を流体力学的な観点から解明することを目的としている。特に,効力を利用する細毛の構造形態と機能の関連性に関する普遍的な真理を究明することを目的とし,さらに,それらの応用についてもバイオマイクロ流体工学の立場から考察を進める手法に基づいて,研究を遂行した。平成20年度は,平成19年度に行った研究成果をまとめて論文として公表し,さらに以下の研究成果を得た。(1)種子に細毛を有する植物の成長プロセスの定量化:一般に生物の成長はvon Bertranfffy式によって記述される。しかしながら,当該研究で取り上げたタンポポの成長は,周囲環境を認知し個体によっては通常の成長曲線と異なる成長を示すことが明らかにされた。さらに,タンポポの花茎の切断が頭花の閉花を誘発すること,および閉花に対する水供給が閉花を遅らせることなども長時間微速度観測によって定量的に明らかにされた。(2)植物細毛展開プロセスの定量化:花期を終えたタンポポのつぼんだ花を花茎から切り落としても,その切断つぼみは自動展開機構によって展開する生命力を有することを定量的に示した。その展開の際に,つぼみは重力場に対して正常に立ち上がることも示した。さらに,それらのタンポポの個々の種子が展開の際にどのような運動を行うかを映像によって示した。冠毛の展開に関しても,果序展開に比較して短い時間で展開し,そのメカニズムは風や光によって水分を失う乾燥に起因していることを明らかにし,宇宙展開構造物などへ応用可能であることを示した。
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