研究概要 |
本研究では,重質燃料を燃焼した場合の燃焼排ガスからの潜熱回収を想定し,硫黄分を含有する燃料を燃焼させた場合に,燃焼排ガスの冷却が煙道中の凝縮性二次粒子の生成に及ぼす影響を調査した.昨年度と同様に長さ約13mの亜鉛引きスパイラルダクト製煙道が付属した矩形燃焼炉(寸法570mm×770mm×2420mm)に小型噴霧燃焼バーナを設置し,純灯油と硫黄分の質量分率が1000ppmとなるようにチオフェン(C_4H_4S)を添加した灯油を燃料として実験を行った.さらに煙道の最上流に水冷の熱交換器を設置し,燃焼排ガスを露点温度以下まで冷却した.燃料流量は1.41g/sで一定とし,空気比が1.2となるように燃焼空気量を設定した.煙道の上流から下流にかけて排ガスをサンプリングし,サンプリングガス中に含まれる微粒子の粒径分布を測定した結果,燃料中に硫黄が含まれる場合には100nm以下の粒子が増加するが,排ガスを冷却しない場合と比較して,より大粒径の粒子が増加することがわかった.さらに生成微粒子の性質を明らかにするために,煙道から排ガスをサンプリングする際に空気による希釈を行い,さらにその希釈用空気の温度を変えて(常温,150℃,300℃)粒径分布の分析を行った.その結果,150℃以上の空気で希釈した場合,排ガスを冷却しない場合には粒径が10nmから100nmの粒子が大幅に減少するが,冷却した場合には50nm以下の粒子が減少せず残存し,粒子数のピークも10nm程度になることがわかった.加熱空気で希釈した場合の排ガス中微粒子をフィルタで捕集し成分の分析を行った結果,煙道上流から下流にかけて微粒子中のSOF(有機溶媒可溶成分)が増加していることから,排ガスの露点以下への冷却により,排ガス中の高沸点炭化水素が凝縮し,さらに硫黄分の存在により微粒子の凝集が促進されるのではないかと推察された.
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