研究概要 |
近年,燃焼装置やディーゼル機関から排出される粒子状物質(PM)に対する規制が強化され,特に,数100nm以下のナノPMは肺胞内に蓄積するといわれ重要視されている。大気汚染物質の除去法の一つとして,電界やプラズマなどの放電現象を利用したすす抑制に関する研究が多く報告されるようになった。しかしながら,電界によるすす抑制メカニズムについては未だ十分に解明されていないのが現状である。そこで本研究では,火炎に直接電界を印加する方式を採用することですす抑制のメカニズムを実験的に解析する。 平成19年度においては,実験装置を製作し,電界印加による火炎挙動の変化を観察し,写真撮影を行った。その結果,ノズル電極に正電圧を印加した場合には火炎長さが短くなり,火炎先端幅が広がった。負電圧を印加した場合は火炎が逆に押しっぶされるように短くなっいくのが観察された。ノズルに直接電界を印加することでノズルから噴出する燃料の活性化および燃焼火炎自身が高電位となり,火炎先端部の電界集中によるイオン風が生じるようになる。特にノズルに正電圧を印加した場合においては,印加電圧が10kV以上になると火炎先端部に尖状の部分が現れ,著しい燃焼挙動の変化が現れた。このように,イオン風によって火炎先端周辺の空気が火炎内に同伴されて燃料と空気の混合が促進され,燃焼性の向上とすすの抑制を同時に実現させることが期待できるものと考えられる。平成20年度は,排出すす中のナノPMの粒度分布やPMの構成成分に及ぼす電界の影響,火炎温度や火炎の発光スペクトルと電界の関係などについて調べていく方針である。
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