不純物などの濃縮による除去方法の一つに凍結濃縮法がある。中でも流下液膜法は冷却面上に氷を生成させる方法であり、エネルギー消費は大きい反面、除去性能が良いことで知られている。しかし、その際に生成される氷は特に制御されていない多結晶であり、氷の異方性という特異な性質を生かす研究は見当たらない。本研究では、生成する氷に一定の結晶軸を持たせることにより、固液界面と結晶軸との関係により不純物の取り込み率にどのような違いが生じるかを実験的に明らかにし、最も除去性能の良い製氷方法を提案することを目的としている。昨年度は、予め単結晶を作り、c軸を法線方向に持つ氷の面を成長させると、取り込み濃度が2桁近く小さくなることを明らかにすることが出来た。今年度はc軸を法線方向に持つ氷単結晶の製氷方法を2種類検討した。一つ目は、伝熱面温度を融点近傍に保つことにより低い過冷度で自然解消させ、伝熱面上に薄い氷を生成させる方法。固液界面の法線方向はc軸となる。過冷度が大きいと法線方向にデンドライト状の氷が生成してしまい、単結晶とはならないので注意が必要。二つ目は、伝熱面を上面に持ち融点近傍に保った水溶液中に下部からフラジルアイス(単結晶)を投入する方法。フラジルアイスは平らなため、浮力により上昇し伝熱面に到着するとc軸は伝熱面の法線方向を向く。その後伝熱面温度を下げていき結晶を成長させる。予め単結晶を設置する方法も含め、3種類の方法で取り込み濃度の比較を行った。その結果、フラジルアイスからスタートさせる方法が一番取り込み量の少ないベストな方法であることが分かった。
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