無着色の同種樹脂(特にポリオレフィン樹脂、フッ素系樹脂)のレーザー溶着技術の開発は各産業分野で熱望されているが、現在のところ、色素添加が必要な半導体レーザー溶着法では対応出来ない。これに対し、「赤外線透過放熱体を利用する無損傷のレーザー溶着法」により上記の難接合材料の溶着性の向上を図った。ただし、従来適用してきたCO_2レーザー(波長10.6μm)では、大多数の樹脂は非常に強い吸収性を有しているため、肉厚の部材に対しては、赤外線透過放熱体の効果に限りがあった。そこで、波長が約5μmのCOレーザーを適用し、上記の課題を解決する検討を試みた。 フッ素樹脂のPFA材の透過スペクトル計測では、5μmでの透過率は21%(t=0.5mm)であり、10.6μmの場合(0.01%(t=0.5mm))と比べて、適度な透過と十分な吸収とを両立していることを確認した。溶着試験により、CO_2レーザーでは重ね合わせ溶着が不可能だった0.5mm厚のPFAフィルムが、部材界面の溶融一体化も確認されると同時に、レーザー照射表面に何らの損傷も見られなかった。観察の結果、界面からの溶け込み深さが約250μmと、溶着に必要な50μmを超えており、厚み0.75mm程度のフィルムまで本溶着法は対応可能と推察される.
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