本研究は、含水多孔質と発熱コイルを利用した簡易な装置で迅速かつ高効率で過熱水蒸気を発生させる方法について、種々の実験パラメータの影響を調べ、より高性能な過熱水蒸気発生方法を提案するための学術的な指針を得ることを目的とする。 実験では、多孔質試験体(50mm×50mm×80mmの直方体)の中央に直径8mmの貫通穴をあけ、カンタル線のコイルを穴の内面に接するように配置して貫通穴の一端を閉じ、浅く水を張った皿に多孔質体底面を浸して水を十分吸収させた後、コイルを通電加熱し、他端の穴から流出する蒸気の温度とその時間変化、蒸気生成速度、エネルギー変換効率などを調べた。 平成19年度は、平均細孔径の異なる二種類の多孔質材料(イソライトB5とC1)を用い、過熱水蒸気生成特性並びにエネルギー利用効率について調べ、また多孔質とコイルヒータの接触状態の影響を調べた。 平成20年度は、特性の異なる多孔質材料(イソライトB5とC1)について、ニッケル線をヒータに用い、過熱水蒸気生成時の加熱コイル温度を抵抗温度変化法により計測して各多孔質材における熱伝達特性を調べ、結果の比較から、過熱水蒸気生成のメカニズムについて実験的に検討した。その結果、コイルヒータ接触部付近の多孔質内部には高熱流束で加熱されるため乾燥領域が形成され、水蒸気は主にその乾燥域の大きな固気接触面積と高いマイクロチャネル熱伝達率により過熱されるとするモデルにより結果を矛盾無く説明できることが明らかになった。
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