研究概要 |
本研究は、複雑な構造を持つ電子デバイス素子などのナノ構造物の熱物性を、分子シミュレーション・格子振動(フォノン)解析・マイクロスケールシミュレーションを併用して調べ、統合的な熱物性・熱特性シミュレータを開発することを目的とする。 このために、分子レベル/ナノスケールのシミュレーションとモデリングを経て、マイクロメートルスケールの熱輸送予測ができるシミュレータの構築をめざす。 2年計画の最終にあたる本年度は、これまでに開発をおこなった分子スケールシミュレータを用いて大規模テスト計算を行ったほか、メゾスケールシミュレーションを行うために新たにDSMC法をフォノンダイナミクスに応用する試みを行い、以下のような成果を得た: ○分子スケールシミュレーション:1000から200,000粒子の大規模系を使ったモデル固体薄膜の非平衡熱輸送計算を実施し、エネルギー流束の膜厚依存性を求めた。これにより、薄膜における拡散的輸送から弾道的輸送への変化を定量的に評価することができた。 ○フォノンのDSMC計算法の開発:従来行われている緩和時間近似(線形化近似)によるBoltzmann輸送方程式の数値解法では、モードの異なるフォノン間の相互作用が全く無視されていた。この欠点を解消するため、希薄気体力学で用いられる直接シミュレーションモンテカルロ(DSMC)法を応用することを考え、フォノン-フォノンの2体衝突を適当な衝突モデルによって取り扱うシミュレーションコートを開発した。
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