本研究は、遷移レイノルズ数領域における平面状急拡大流路内流れを解析対象とし、三次元・非定常ナビエ・ストークス方程式とエネルギー方程式について、直接数値解を求めることにより、剥離剪断層の挙動、再付着位置の移動、大規模渦塊の放出機構、それらに基づく熱伝達機構の詳細を解明するとともに、遷移レイノルズ数領域における剥離・再付着流れの数理モデル構築の基礎資料を提供しようとするものである。平成19年度の研究により得られた成果は以下のとおりである。 1、対称急拡大矩形流路のアスペクト比が減少するとともに、流路内流れに及ぼす側壁の影響が強まるため、より高いレイノルズ数まで対称流れが維持され、かなり遅れて非対称流れに遷移する。 2、アスペクト比およびレイノルズ数が増加するとともに、側壁近傍に複雑な流れ場が形成されるため、それにより壁面へと向かう速い流れが生じる側壁近傍でヌッセルト数は最大となる。この現象は長い剥離泡が生じる壁面側よりも、短い剥離泡が形成される壁面側で顕著である。 3、レイノルズ数の増加にともない、側壁の影響による流路全体の流れの三次元性は強まり、結果として流路中央部でのコアンダ効果が弱まるため、流路中央部でのヌッセルト数が低下する。 4、実験では十分に大きいと考えられるアスペクト比16の流路の場合でも、壁面近傍では壁面に平行な旋回流れが生じており、流路中央部においても流れは二次元的な様相を示すことはない。そのため流路中央部においてヌッセルト数分布にも二次元性は見られない。
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