研究概要 |
本研究は,遷移レイノルズ数領域における対称急拡大流路内流れを解析対象とし,三次元・非定常ナビエ・ストークス方程式とエネルギー方程式について,直接数値解を求めることにより,剥離剪断層の挙動,再付着位置の移動,大規模渦塊の放出機構,それらに基づく熱伝達機構の詳細を解明するとともに,遷移レイノルズ数領域における剥離・再付着流れの数理モデル構築の基礎資料を提供しようとするものである.平成20年度の研究により得られた成果は以下のとおりである. 1.本研究で取り上げた対称急拡大流路内流れは,レイノルズ数Reの増加にともない,定常対称流れ(Re〓200),定常でy軸にのみ非対称な流れ(Re=400),定常でy,z軸ともに非対称な流れ(Re=600),非定常流れ(Re〓1000)へと遷移した. 2.定常流れでは,熱伝達特性に及ぼすレイノルズ数の影響はそれほど大きくない.一方,非定常流れでは,再付着領域においてスパン方向に軸をもつ渦による熱伝達が活発になる.再付着領域より下流では,スパン方向渦によって生成される縦渦が支配的となり,熱伝達が比較的良好な領域が側壁近傍に形成される. 3.非定常流れでは,再付着領域のわずかに上流からそれより下流にかけて強い非定常性を示すが,拡大面付近には定常的な流れが維持される. 4.時間平均的な流れ特性は,拡大面付近においては,流れが定常・非定常であるによらず,ほぼ同様である.側壁近傍の流れはステップ後方に形成される再循環領域に取り込まれ,上流側へ運ばれた後,拡大面付近のスパン中央部の主流に巻き込まれ,下流へと流下する様相を示す.
|