研究概要 |
固体高分子形燃料電池の発電電流密度を高く維持し続けるには,発電時において高分子電解質膜の含水量を高く保ってプロトン伝導性を高く維持し,かつ,ガス拡散層や流路でのフラッディングが起こらぬようにセルの水分管理を適切に行う必要がある. PEFCの小型化や高出力密度化のためには, PEM全体でプロトン伝導性および発電電流密度を高く維持することが求められる.これに対処するには,電流密度が低下している領域を計測して見出し,低下の程度とその原因を把握する必要がある. そこで本研究では,計測試料よりも小さい小型表面コイルを計測試料の表面に配置して,試料の局所で取得したNMR信号から電流値を計測できる手法を開発した.この方法は,試料中を流れる電流によって形成される磁場を, NMR信号の共鳴周波数シフト量として取得し,電流値を推定する方法である.内径0.6mmの小型コイルにより計測領域を限定し,その領域での周波数シフト量を位相の時間変化として取得した.以下に,燃料電池発電時にMEA内を流れる電流値の空間分布の計測を行って得られた結果を列挙する. 小型表面コイルを用いたNMR計測を用いて,導電体に流れる電流に対応した周波数シフト量を計測することにより,電流が計測できることがわかった.複数の小型表面コイルを燃料電池内に配置することにより,発電状態にある燃料電池内部の電流の一次元空間分布が計測できることがわかった.燃料電池発電時の等価回路をモデル化して磁場解析を行い,計測値と比較をすることで一次元電流分布が推測できることがわかった.触媒層の領域が半分のMEAで電流計測を行い,燃料電池の発電状態が不均一なときにも本手法によって電流の空間分布が推測できることを示した.
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