直噴式ディーゼル機関の小型・軽量化、燃費の低減を目指し、従来よりも低い噴射圧で噴霧特性を大幅に改善できる噴射ノズルの開発、実機への適用性について検討を行った。 1.低圧噴射時における流量特性、噴霧特性の改善 実機よりも低い噴射圧において良好な噴霧特性が得られた場合でも、実機のような高圧噴射時における噴射量よりも少なくなると、出力低下を招くことが考えられる。一般に、流量特性を向上させるために、噴孔入口部にR面取りを施すが、噴霧の微粒化状態は極端に悪くなる。しかし、開発した微粒化促進ノズルは、噴孔の一部にR面取りを施した場合、流量特性の改善と、噴霧の微粒化特性のさらなる改善ができた。 2.実機と同じ高圧雰囲気下における適用性 これまでに開発した単噴孔微粒化促進ノズルの構造に基づき、新たに噴孔数を複数本設けた多噴孔微粒化促進ノズルを設計した。雰囲気温度以外は実機とほぼ同じ、常温・高圧雰囲気下(293K、1.6MPa)において、間欠噴射した場合、多噴孔ノズルの噴霧先端到達距離は、単噴孔ノズルと比較して短く、貫徹力は弱いが、噴霧の拡がりは格段に大きくなり(約3倍)、高分散噴霧が得られた。また、実機ディーゼル機関を整備し、燃料消費率、出力、トルク、熱発生率等のエンジン性能特性を測定する装置の構築を行った。 3.高粘度液体への適用性 ディーゼル機関のみならず、ボイラー用燃焼器、温室効果ガス排出量の低減のための石油代替燃料である水素を燃料とする機関など、高粘度液体燃料、高粘度気体燃料の使用も社会的に視野に入れる必要がある。高粘度液体を使用時、開発した微粒化促進ノズルの噴霧特性を調べた結果、従来のノズルの場合、噴流は全く微粒化しないが、本研究で開発した微粒化促進ノズルは、低粘度液体とほぼ同じ噴霧の拡がり、噴霧特性が得られ、高粘度液体への適用の可能性を示した。
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