研究概要 |
強化材懸濁液に超音波を付与することにより,母材にナノ粒子あるいはナノ繊維が周期的に配列した異方性の強い機能複合材料を開発することを目的に,母材として水,6Nylon, Bi-Sn合金を,強化材としてアルミナ粒子,シリカ粒子,ガラス繊維を供試した実験を行い,以下の結果を得た. (1)融体中に定在波を共鳴させるために対象試料の超音波音速の把握が不可欠となる.超音波送受振子として圧電素子を用いた簡単な音速計測装置を組み上げ,高温融液状態を含む凝固中のBi-Sn合金とPb-Sn合金の音速変化が,組成比,温度場,相平衡状態図との関連性のもとで明らかとされた. (2)樹脂と合金試料を供試し,射出形成中の小型試験片(JIS K7113号型)の評点間局部に超音波定在波を投入した実験を行い,光学顕微鏡を用いて凝固後の試料断面を観察した.観察像からは超音波の周期に対応した混入繊維・微粒子の規則性は確認されなかった.樹脂母材の粘性や繊維濃度の影響が主たる要因と考えられるが,それらの問題を解決すべく音響エネルギと投射時間の強化について検討した.また,合金母材にアルミナ微粒子,シリカ微粒子を混合させる場合には素材の濡れ性や表面張力の影響に対して工夫が必要であることが明らかにされた. (3)電気二重層力,van der Waals力,粘性抵抗力などの界面近傍に生じる力を考慮し,ナノ強化材を含んだ融液の結晶成長メカニズムが示された.これら界面現象が,音響場によって形成された配列層の固定に関与しており,粒子径や凝固速度に密接に関係していることが明らかとなった.
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