結晶成長に及ぼす対流の影響を体系的に研究する第一歩として、平滑界面からのミクロ・マクロモルフォロジ不安定性発生限界に対する対流の寄与を明らかにすることを目的とする。制御された浮力対流により結晶成長実験を行い、成長界面の観察により不安定性限界を決定する。また、対流を含む結晶成長過程を模擬する数値シミュレーションを行い、実験と数値解析の両面から対流の影響を調べることとした。 成長モルフォロジを決定する界面での過冷度は、実際の成長界面の温度を知る必要があるが、時々刻々成長を続けている界面の温度計測はほぼ不可能である。そのため、界面前方の温度勾配を計測することで過冷度を間接的に測定することとした。それにより、界面不安定性が発現する限界を定量的に評価することができる。まず、実験装置の構築を行い、対流を抑制した条件でのリファレンスデータの取得を行った。このとき、系を単純化して理解を図れるようサクシノニトリルの融液成長系を採用した。 一方、数値解析による現象解明を実施するため、本年度はマクロな界面形状の数値解析を開始した。成長界面の熱・物質バランスを考慮した結晶成長解析コードにより、マクロな界面形状の数値解析から界面不安定性は発生する前の状態における界面形状を実験と比較した。この解析では、ミクロな界面モルフォロジは取り扱えないため平行して新たな数値解析手法を取り入れる準備として、界面モルフォ・ロジを取り扱うために上述の数値解析コードにカーン・ヒリアード方程式を組み合わせマルチスケールシュミレーションの検討を行い、数値解析のコーディングに着手した。
|