研究概要 |
本研究では,一様流中に置かれた弾性支持構造物に作用する流力外乱特性を実測データより同定する方法を研究し, 流力外乱の力学的構造ならびに周波数特性を調べた. 平成19年度にはシステム同定手法を用いて流体力モデルを同定し, 100%に近い適合率を得ることができることを示した. また, 本システムの流体力発生機構には, 円柱変位と速度信号のフィードバックを考慮する場合が最も適していることが分かった. 平成20年度は, 非線形ばね特性を有する構造物の渦励起振動に関して実験とシミュレーションによりその特性を調べた. 円柱中央に小径孔を有する円板を取り付け, これを通って円柱の両端の外で固定されるワイヤーを設置して非線形ばね特性を付加し, ロックイン時の振動特性を調べた. 電磁石を用いて既知外力による加振実験を行い, 線形ならびに非線形特性を同定し, 3次の非線形項を有するばね特性を同定した. 時間一周波数分析より, 円柱の線形固有振動付近に強い成分が現れるが, ロックイン領域においては, このスペクトルの強い部分が徐々に遷移することが分かった. また振幅が急激に減少するジャンプ現象が確認された.渦励振時の周波数応答よりワイヤーが無い場合は線形復原力特性となり, 円柱は線形固有振動数で振動する. しかし, ワイヤーの影響で復原力が非線形特性を有する場合は, ロックイン領域において, 振幅の増大に応じて共振振動数も高くなり, 流速の上昇時と下降時において円柱の挙動が異なるヒステリシス性が現れ, ジャンプ現象が発生していることが分かった. ワイヤーを取り付けた系の時刻歴信号にWavelet解析を実施して, 応答波形の包絡線と瞬間振動数を抽出し, 瞬間振動数と振幅の関係より周波数応答を求めた。その結果,振幅の増大とともにわずかではあるが共振振動数の増大を確認できることが分かった.
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