研究概要 |
本研究では,慣性質量による慣性力および発電機による減衰力を利用した振動抑制装置を開発した. まず,基本特性把握を目的として,本研究で設計製作した発電式振動仰制装置に振動台を用いて正弦波,三角波およびランダム波加振実験を行った.回転慣性質量の理論値および減衰力の理論値を実験結果との比較検討を行い,理論の妥当性,および実用化に反映させるため設計指針を明らかにした.さらに,これまでに検討が行われなかった発電機の限界性能把握を行い,本装置の機能喪失範囲を明確にした.想定される準能動機能喪失にも,フェールセーフ機能として本システムが受動機能を備えた通常の制振装置として機能することを確かめた.また,可変抵抗コントローラを用いた場合の指令信号に対する応答遅れを調査し,後述の制振システム設計に反映させた. 次に,準能動制御解析として建築構造物の準能動制御系を設計し,その性能を理論的に解析した.地震等の外乱に対する各層の変位や加速度等から構成される制御出力を,そのL2ノルムの意味で最小化するような装置の二値減衰切替え手法をLMI(線形行列不等式)に基づく解析によって求め,制御手法の振動抑制性能をシミュレーションによって検証した. 最後に,実用化に向けての予備実験として,大規模な三層構造物に本装置を取付けて,振動台により地震波を再現したときの振動抑制効果を検証した.本実験は,台湾大学,地震工程研究センターの施設にて行われた.前述の制御手法を用いた準能動の場合,およびフェールセーフ時の能動の場合における振動抑制効果を実証した. これらの実験によって,受動・準能動の双方に適応可能な制振装置を開発するとともに,応答遅れ等を考慮した場合の新たな制振システムを考案し,それらを実大構造物を用いた振動実験によって検証したことは大変重要である.
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