研究概要 |
平成19年度に行った実大三層構造物の地震波振動実験結果から, 構造物の物理パラメータを同定した後, 解析を行い, 実験結果と比較した. 物理的定数はダンパが設置されていない場合のホワイトノイズ入力時における振動モードから同定した. またダンパの性能は, 平成19年度に行ったダンパ単体の性能試験より得られたデータに基づき解析を行った. 準能動制御手法として, 時間遅れを考慮した場合の建築構造物の準能動制御系を設計し, その性能を理論的に解析した. 地震等の外乱に対する各層の変位や加速度等から構成される制御出力を, そのL2ノルムの意味で最小化するような装置の二値減衰切替え手法をLMI(線形行列不等式)に基づく解析によって求め, 制御手法の振動抑制性能をシミュレーションによって検証した, これらの解析結果を実験結果と比較した結果, 20〜30%程度に振動が低減し, 解析の有効性が確かめられたとともに, 実用化された場合の振動低減効果が検証された. また, 増速ギアを用いることで回転慣性質量の数倍から数十倍の大きな慣性力を発生させることができ, その有効範囲は実用に耐え得るものと判断できた. 次に, 現実の高層RC構造による建築構造物の解析を, 本件で提案したダンパを設置した場合の振動解析を行った. これにより, 実構造物へ対する本ダンパの有効性を実証した. これらの結果を踏まえて, これまで3t用であった設計を, 実用段階の100tおよび50tに適応可能な大型ダンパの設計を行った. これは, 各部材, 部品の限界耐力を計算した上で, 各部品メーカーとの打ち合わせを重ね, 試作の見通しが立った. これは実用化にとって大変重要な一歩である. 本件によって, 受動・準能動の双方に適応可能な制振装置を開発, 新たな制振システムを考案し, それらを実大構造物を用いた振動実験によって検証し, 実際の実用設計を行ったことは大変重要である. 最後に, これらの成果を日本機械学会, 日本建築学会およびアメリカ機械学会, アメリカ土木学会で発表した.
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