研究概要 |
アクティブ音響シールディング(Active Acoustic Shielding : AAS)とは,マイクロホンとスピーカが一体化したユニットを境界面に沿って格子状に並べ,入射してくる音波の波面に対して同振幅・逆位相の波面を生成し,入射音を消音する技術であり,風は通すが音は遮断する「アクティブ遮音通風窓」や,遮音性能を高めた「アクティブ遮音シート」などの開発に供せられる. 本研究では,対象周波数とユニット間隔,対応可能な音波面の入射角,透過側からの反射の影響などの原理的課題及び,コントローラやハウリングキャンセラーなどのシステム上の課題を,シミュレーションと実験により検討し,AASの成立性とその基本的な手法を明確にすることを目的とする. 初年度及び2年度の研究で,シミュレーションとモデル試験によって,AASの基本コンセプトの成立性が明らかになった.また,信号処理の高速化を狙ったFPGAを搭載した独自のANCコントローラのハードウエアを作成した.今年度は研究のまとめとして,以下の成果が得られた. (1) AASを設置した小型の窓を作製し,その窓が,正面音源,斜め音源,複数音源,移動音源に対して有効であることを実験で確認した.また部屋の中での音響反射や,内部の音源に対しても悪影響を受けないことが明らかになった.なお,実験で確認した有効周波数帯域は500~2000Hzである. (2) FPGAを搭載した高速信号処理装置を用いることにより,因果律を大幅に改善でき, 参照マイクロホンと制御スピーカの間隔が数cmのコンパクトなAASセルが実現できることが分かった.
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