ボイラ・熱交換器などの管群は発電プラントや化学プラントなど広く使用されており、重要な設備要素である。しかしながらプラントを稼働させると予想しなかった大音響の純音(以下異音)が発生し、作業員はもとより近隣住民から苦情が殺到し、プラントを停止せざるをえない状況となる。その結果、多大な補償工事費が発生するのみならず社会的信用も失墜するなど甚大な被害を被る。したがってこのような事態を未然に防ぐ技術の確立は重要であり、ニーズも高い。 この種の問題は音響共鳴と呼ばれ、管群背後に生ずるカルマン渦の脱落周波数とダクトが有する気柱共鳴周波数とが一致すると発生するといわれている。ところが実現象では流速を増しても異音が発生し続けるため、自励現象であるとも言われている。そこで本研究では自励機構を明らかにして合理的な対策法を提案することを目的とする。 まず管群列数を変えて発生する異音の周波数や音圧レベルを計測した。次に吸音材をダクト壁に貼付し、その量を変えることで音響減衰を変え、音圧レベルを計測した。さらに管群前方の静圧も同時に計測した。これらのデータから以下の結論が得られた。 (1)管群列数が多いときには1次モード、少ないときには2次モードの共鳴音が発生するが、これは、渦による励振力が流速と管群列数に強く依存していることを示唆している。 (2)共鳴周波数により求めたストローハル数は、管群数が増加するにつれて上昇する。T/DとL/Dの組合せでストローハル数を求めるFitzhughの図を用いる際には注意が必要である。共鳴発生時での渦放出の周波数により求めたストローハル数も、管群数が増加するにつれて上昇する。しかし非共鳴時でのそれは管群数が増加するにつれて減少している。 (3)共鳴音の振動モードの関係から、吸音材は上下面に貼るより横の面に貼る方が効果的である。
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