研究概要 |
回転機械の中には,回転体の表面が多角形状に変形し,それが成長する過程を経て大きな振動現象を引き起こす問題がしばしば発生している.研究代表者らは,この現象を時間遅れに起因する不安定自励振動とみなして研究を行ってきた.その際,厳密で効率的な新しい安定判別法を開発することで詳細な検討を可能とした.本研究では,この時間遅れに起因する多角形化現象を対象として,理論・実験の両面から実用的な防止対策法を開発することを目標とする.その実現に向けて本年度は下記に示す研究項目を実施した. 1.研究代表者らが開発した「安定・不安定境界の存在条件に基づく安定判別法」とトポロジカルな最適化問題に対して有力な遺伝的アルゴリズムとを有機的に結合することにより,多自由度系における動吸振器の最適設計に対する汎用性が高いプログラを作成し効率的な設計を可能とした. 2.多自由度系では非常に狭い範囲に複数のモードが混在する場合があり,動吸振器を取り付けることで不安定領域の分布がさらに複雑のものとなる.このような系では,動吸振器の取り付け前後でのモードの対応の判別が極めて困難であり,多自由度系における効果的な設計法であるモード毎設計法の根源に関わる問題があった.この対策として,不安定領域におけるロールおよび接触点の変形量に関するそれぞれの複素モードベクトルの内積を利用することにより,明確な判別が可能となり,より効率的で信頼性の高い最適設計を実現した. 3.実験装置を遅れ時間が1回転周期である1自由度系から半回転周期の2自由度系に改造し多自由度系に対する実験的検証を行った.その結果,動吸振器による防止対策が多自由度系に対しても有効であり,前述のモード毎設計法による最適設計法の有効性を確認した 以上の研究成果により,時間遅れに起因する不安定振動に対する動吸振器を用いた防止対策の実用性とその最適設計法の確立した.
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