平成19年度の研究ではまず、提案した雑音除去手法の最適パラメータについての検討を行った。数値シミュレーションにおいて、信号の混入されるインパルス状雑音の数およびSN比等を変化させながら最適なパラメータの選択を行った。その結果、提案する雑音除去手法において設定すべきパラメータであるウェーブレット展開を行う際の次数の最適値は信号の長さには影響されないことが確認された、さらに、提案する方法とほかのフィルタリング手法との比較を行った結果、手法の有効性が確認された。この結果は現在、国際論文誌に投稿中である。また、提案する手法を実際に高精度表面形状計測信号である原子間力顕微鏡によるシリコン表面の測定信号に適用し、信号中に含まれるインパルス状雑音の除去を行い、提案する手法の雑音除去能力を検討した。その結果、以前にわれわれが提案したM変換と非線形フィルタを組み合わせる雑音除去手法よりも本研究で提案する手法の方がインパルス状雑音の除去能力が高いことが示された。この研究成果は日本機械学会論文集に掲載された。提案された雑音除去手法を流れベクトルの推定にも適用した。その結果、オプティカルフロー中に単独で存在する不連続な速度ベクトルに関しては、提案する方法により雑音を除去することにより、不連続な流れベクトルの除去が可能であることが示された。しかし、PIV(粒子画像計測法)による測定のように、不連続なベクトルがある領域内で存在する場合には良い推定値が得られなかった。現在、この点を改善する方法を検討中である。
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