研究概要 |
本研究の目的は部材の材質や寸法の検討を機械設計の段階で閉じてしまうのではなく,制御系設計と融合させ,動的な力に対する部材の変形量を厳密に見積もることにより,疲労破壊を回避する制御系設計手法を開発することである.そこで平成20年度は平成19年度の成果を踏まえ,「シミュレーションによる検討」と「実験装置の製作と実験」をおこなった. 1.シミュレーションによる検討 部材の強度判定プログラム,二分法アルゴリズム,線形行列不等式(LMIs)に基づく補償器設計プログラム,および目標値入力に対する部材の挙動を再現するシミュレータを構築した.対象とする運動(変形)は,回転運動におけるねじりである.まず,二分法アルゴリズムと非線形最適化に基づく疲労破壊回避のための軸径と臨界制御系の設計をおこなった.この結果,疲労破壊が生じないような軸径とI-PD補償器ゲインが同時に設計された.次に,LMIsに基づく臨界制御系の設計をおこない,効率的に補償器が設計されることを確認した. 2.実験装置の製作と実験 回転運動における軸ねじりを再現できる装置を製作した.この装置では,駆動モータが弾性軸を介して負荷を回転させる仕組み(2慣性共振系)になっている.モータの回転角と負荷の回転角はそれぞれセンサにより検出され,これらの差から回転軸のねじれ角を算出できる.目標指令値は制御用コンピュータから逐次,出力される.この装置を用いて,シミュレーションにより設計した補償器を実装し,制御実験をおこなった.その結果,実機においても所望の制御性能を満たし,軸ねじれ角が疲労破壊を回避する範囲内に抑えられることを確認した.
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