平成20年度においては、波動歩行機械の1つである4つのステアリングを持つ平面5節リンク移動機構を設計し、その実験機を開発し、その機構設計と制御方法の有効性を実験的に検証した。具体的には、(a)研究代表者である山口博明が、平面5節リンク移動機構の運動学的方程式を微分幾何学に基づいて正準系であるChained Formへ変換し、このChained Formに基づいて直線経路への追従を達成するフィードバック制御法を、多様な条件設定(パラメータ設定、初期条件設定)において評価することができるシミュレータを開発した。また、(b)研究協力者である青山学院大学大学院理工学研究科知能情報コース博士前期課程2年森永拓哉、渡辺正記、関泰士らと共に、開発したシミュレータを用いて直線経路への追従を達成するフィードバック制御法の評価を行った。そして、(c)シミュレータ上における評価から、平面5節リンク移動機構の関節の駆動、ステアリングの操舵に必要なトルク、関節角の測定、ステアリング角の測定に必要なセンサの測定精度を算出し、これらに基づいて、機構の設計、アクチュエータ(モータ)の選定、センサ(エンコーダ、ポテンショメータ)の選定を行った。それから、(d)機構部品の製作を行った。さらに、(e)波動歩行機械の走行実験を行うために設置した広さ4.0m×4.0mのフィールドにおいて、このフィールド上の高さ3.0mの天井に取り付けた定点カメラによりその運動を計測するビジョンシステムを用いて、直線経路への追従を達成するビジュアルフィードバック制御系を構成し、その機構設計と制御方法の有効性を実験的に確認した。特に、実験値が理論値に非常に良く一致しており、設計した運動性能をこの平面5節リンク移動機構が十分に実現していることを確認した。
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