研究概要 |
目的の概要 本研究の目的は,「人間相手の医療行為を模擬的に実習できる人間の個性と感情を工学的に具現化した看護実習用患者ロボットの研究開発」である.人間の感情モデルの確立とカオス制御による個性創出のための基礎研究を行う. 本年度(平成22年4月1日~平成23年3月31日)の研究成果 【感情・行動表現の人間的多様性の実現】担当:見浪護 前年までの研究で任意な関数を任意な精度で近似できるというニューラルネットワークの特徴を利用して,複数のカオスを生成し多様な人間の感情を表現できる数理的メカニズムを提案した.提案しているニューラルネットワーク組み込み型微分方程式により複数のカオスが発生することを確認した.このカオスを患者ロボットの感情表現としてロボットに組み込み医学部看護学科学生の血管注射実習に用いて,カオスを用いたロボットの表情や挙動による実習効果の向上を確認する実験を行った.その結果,実習学生の予想しない患者ロボットの動きによって,実習時の緊張状態が保たれ実習効果が上がることが確認された.この研究成果を,日本機械学会論文集C編に「患者ロボットのカオスを用いた反応動作の看護実習への効果」という論文で発表した. さらに,ニューラルネットワークの結合係数を少しずつ変化させることで多種のカオス(現在5種類のカオス)の発生を確認した.これによりニューラルネットワークを用いた微分方程式により多くのカオスを発生させることができる可能性を確認した. 【患者ロボットの対看護学科学生への相対的運動(人間の「しぐさ」のロボットによる実現):ビジュアルサーボの研究】担当:見浪護 人間の顔を含む頭部の位置の3変数と姿勢の3変数をビデオカメラの信号の送信速度(1画面あたり33ms)に遅れることなく計測する機能は,患者ロボットが看護学生の注射トレーニングを観察・評価する上で基本的な要素技術である.今までの研究で提案した「1-step GA」実時間最適化手法により位置・姿勢6変数の実時間計測が可能であることを確認している.この計測技術を用いて人間の顔の位置・姿勢に対して患者ロボットがある位置・姿勢を保つとき,例えば「覗き込む」,「首をかしげる」などの人間特有の「しぐさ」が実現できると考えている.このしぐさ実現の第一歩として,3次元マーカーに対するビジュアルサーボを実現し,実験により確認した論文が,次ページの「フィードフォワード遺伝的認識法を用いた3-Dビジュアルサーボ」と,「3D Visual Servoing by Feedforward Evolutionary Recognition」である.
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