研究概要 |
人間は他の人間とスムーズに協調して作業を実行できる。例えば,1つの荷物を数人で運ぶ運搬作業を考えると,他の人間の動きに合わせて巧みに協調しながら自己の運動を決定している。本研究の全体構想はこのような人間のスムーズな協調制御特性を操縦システムの制御に適用し,非常に操作性の良い操縦システムを開発することである。このような構想の下,1年目は人間どうしの協調運動を力学的に表現できる3次元モデルを作成し,モデルに基づいてスムーズに協調するための力学的解釈を行うことを目的としている。まず,2人の人間がお互いに向かい合い,1つの物体を2人で協調して運搬できるようにし,既存の3次元位置計測装置を使用して位置を計測するとともに,人間が物体に加える力は,購入した6軸力センサを運搬物体の両側に取り付けることにより計測した。 その結果,人間どうしの協調運動は,動作する方向,自由度により,その特性が異なることが示された。最もスムーズに協調するのは,お互いに向き合って物体を前後に運搬する動作であり,次に左右に運搬する動作,最も協調特性が悪いのは,上下の運搬動作であった。前後の運動では,お互いの相互力により協調が可能であるが,左右や上下では,力やトルクの力伝達が少なく,主に物体の動きを両者が見ることにより協調するため,協調特性が悪くなることが分かった。特に上下では,腕の動きがスムーズに運動しないことも分かり,それの原因を調べることが必要である。 また,負荷分配の問題では,主に,1人が主導で他方が従動となる協調が現れ,従動側のインピーダンスモデルを筋骨格特性に基づきモデル化した。強制的に2人の人間が負荷を分け合う実験を行うと,従動側の人間はばね特性が消減し,一定の力を発生する特性が表れた。この結果は2年目に実施する機械の操作制御系への構築に有用であり,従来にない優れた操縦性能を得られることが期待できる。
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